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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

その騒ぎをよそに、さきの玄明と森の巫女も、また後から来た興世王と不死人も、小部屋にはいりこんで、神楽殿の伶人たちを呼びにやったり、巫女を集めて来たり、そして自分たちも、しきりに演技の扮装を凝らしている様子であった。

「よいか。そろそろ」

「よかろう。さきに出て、榊払いをやり給え。それを合図に、天楽を奏し、天女の舞楽を見せ、つづいて、森の巫女が、神降りを演る段になるのだから」

「では……」と、小部屋の帳を払って、玄明が、先に、橋廊下から、おごそかに、

「しいッ……。静まれ、ひそまれい」

と、警蹕の声を発しながら、酒席の中央に、立ち現われた。

玄明は、冠をかぶり、笏を、装束の襟にさし、両手に、榊を捧げている。面には、何か、白い粉や青隈を塗り、付け髯であろう、胸の辺まで、白髯を垂れていた。たれの眼にも、玄明とは、わからない。

「おや。何を演るのか」

「八幡の神職か」

「いや、ほんものの神主にしては、すこしおかしい。誰かの、酒興だろう。何か、戯れ事を、始めるつもりだろう」

満座の顔が、玄明の方を見た。彼は、いよいよ、しかつめらしく、何か、祝詞のような事を、いい始めた。