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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
「……いえ。勉学なんて。……それほどなものじゃありません」
「でも、心がけは、嘉すべしだよ。――ところで、お身は、わしを、知っているか?」
「さあ。どこかで、お会いしたことが、あるでしょうか?」
「こっちから訊いているんだよ」
「失礼ですが……覚えがございません」
「そうだろうな。ハハハハ」
「どなた様でございますか。おさしつかえなくば、お聞かせ下さい」
「そこもとの生国は、東国であろうが」
「そうです。あなたは」
「わかるだろ。ことばでも。……わしも東国さ。しかも、お身の生れた下総の豊田郷から程遠くない常陸の笠間だ」
「や。……」なつかしさに、小次郎は、いきなり立ち上がった。
「……じゃあ、常陸の大掾国香どのを、御存知でしょう」
「知らないで、どうするものか。わしは、国香のせがれだもの」
「ああ。じゃあ、この私とあなたとは、従兄弟にあたるわけです。思い出しました。大叔父国香どののお息子――常平太貞盛どのも、早くからこの都へ、遊学に来ていると聞きました。あなたは、その貞盛どのですか」
「ちがう。貞盛は、わしの長兄。わしは弟の繁盛というものだよ」
「では。御兄弟おふたりで、都にいらっしゃるのですか。