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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

丹波街道のこと

私が婚姻史を書く計画はずいぶん早くからあったが、こんな経験が隠れた刺激になったことは疑えない。

ただ昔を半開時代とか、若しくは非常に乱暴な権力本位のものであったといって、古代人の心遣いを計算に入れないのを非常に残念に思っている。昔の婚姻制度を無視して、ただ士族流に解釈しようとしてしまうのは注意しなければならぬ。四民平等はいいことだが、できるだけ士族を真似しようとするのは良くないことである。昔の農民生活のよかったことを反省してみる必要があるのである。

丹波街道のこと

播州の中央部へと伸びて来る、京都からの丹波街道については、もっと郷土の人々が関心を払ってもいいのではあるまいか。

私は東京に出るまで、じつは読んでいなかったのであるが、近江の学者伴蒿渓が著した『閑田耕筆』を読んだとき、私ははじめて意外なことを発見したのであった。北条の学者児島尚善が自分の通って来た丹波街道における出来事を、その師蒿渓に語ったことが、その中に現われていたのであったからである。

この児島尚善という人の子孫である二人の兄弟と私は北条で交友があり、その父君も尚善という名の三代目かであったため、懐しさに耐えなかったことである。