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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

展覧会などにも、見すぼらしいことを嫌って大きな作品を出したのも、健康に障ったのであろう。

いろいろ標本や手本も拵えていたが、戦災で焼けてしまったのは惜しいことであった。外遊してイタリアの名画を見て、日本画と比較していたが、著書としては『絵巻物評釈』など一つ二つあるだけで、自分の美術論をまとめるまでになっていなかった。理屈はあまりいわなかったし、作品も多くなかったので、いまのうちはお弟子が少しはいるが、後世まで名前が残るか、どうか。

単なる浮世絵でもなく、また単なる土佐絵でも狩野派でもない画風を開いて行ったつもりでいたが、いちばん野心を燃やして人に訴えていたのは、従来の土佐派とちがい、山水をもっと描かなくてはならないという点であった。絵巻物を開いた初めのところに出て来るような、風景だけ描いた絵に眼をつけて、それを大きくし、もう少し自然に描けるようにしてみたいということを、私によく話していた。その最初の試みが、日光から塩原に抜ける高原越の風景画で、兄さんのところへおいておくといってもって来たのが、いま私の家の応接間にかけてある人物抜きの作品である。これはたしか神戸新聞社主催の展覧会に出品したことがあった。