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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
会の連中の中には、日本橋の堀野文禄堂という、珍しい本ばかり出す本屋の主人らも来ていた。こういう人たちの収集欲は少し凝りすぎていて、ちょっとゆきすぎくらいであった。私はそういう人たちに比べて田舎者だったので、いっしょになって「左様でゲス」なんていって歩くことはできなかった。
そのころの日記をみると、じつにいろいろな会を私の家でやっている。
家の養親たちは、私を落着かせるために、こんな会合に座敷を提供したばかりでなく、菓子を出したり、食事を出したりして、皆をもてなしてくれたわけである。
文学者の集まりは、そのころ英国大使館につとめていたコックと家政婦が結婚して、同大使館の裏通りに快楽亭という料理屋をはじめたのを、誰かが見つけて来て、そこで会を開こうということになり、拙宅の会をそのままもっていった。そこの亭主はツンボだったが、大変純な男で、後に麻布の龍土町に引越したので、会もそちらで開くようになり、店の名龍土軒をとって龍土会と名づけられたものであった。
まだ武林無想庵が青年のころで、いちばん主になって世話をしていた。薄田泣菫、国木田独歩なども来た。小山内薫などはまだ学生で、飛白の羽織などを着ているので、われわれは子供扱いにしていた。