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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

明治女学校と播州人

の発行所にしてもらうようになったわけである。私は中川の関係でそこに出入し、寄贈雑誌類を見せてもらって、その批評や紹介の短文を手伝ったり、新体詩を寄稿したりしたのであった。同人のうちでいちばん親しかったのは戸川秋骨君で、他に平田禿木君や、そのころ田舎から帰って来て、音楽学校へ入り直して、金釦の制服を着ていた島崎藤村君あたりとも、旧交を温めることになった。

明治女学校と播州人

中川恭次郎は変った男で、何でも知っている代りに、医者の試験だけはどうしても通らなかった。仕事としては、医者の著書の代筆をしていた。ずいぶん大胆な話であったが、医者の中には暇のない人や、文才のない人がある。そういう人が、これこれの主旨の本を出したいがと中川に頼むと、彼は多少ドイツ語が読めるので、ドイツ書を参考にして本をまとめてやっていた。本郷通りの大きな医書店で中川に御礼をしたものが大分あったらしい。中川は『文学界』とも接触し、他方でこういう仕事をしていたので、じつにいろいろの物知りになっていた。

但馬の出石から出たクリスチャンの巌本善治は、巣鴨の庚申塚に明治女学校というのを建てて、その校長になっていた。