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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

あいさつの辞令などもみなその通りで、長短緩急それぞれの場合にぴたりと合って、作った、こしらえた、という跡が少しもないと思った。

私などもこの空気に同化して、一遍もにらまれたり、つきとばされたりせずに、遠くからまた片脇から、酒宴というものの全容を見終せたような気がした。

そういう中でも心を惹かれずにおれなかったのは、町から招き寄せられた何人かの歌い女に付いて出た、歳は私より一つか二つも上かと思う舞妓が、はじめは左右に二人並んで、つぎには一人ずつで、それぞれの曲に合わせて美しく、またいたいけに舞い、かつ踊ったことであった。

一人の丸顔の背の低いのが、いつでも伴内みたような役にまわるのが私には哀れに思われ、もう一方の面長な眼の細い方の子が、泣いたり、憂えたり、同情せられる、八重垣姫のような役ばかりするのを、何だか少し不公平なようにも思えたが、後になって心づいたのは、それは教える人の計画という以上に、何か人間それぞれの生涯につきまとう運命のようなもののあることを、考えさせてくれたようである。

そうした踊子たちのあでやかな舞姿について、一種の感銘を受けたあと、三木家のおばあさんの居室となっている奥座敷でかいま見たのは、つい先ごろまで踊っていた娘たちが、すでに衣装も脱ぎ、化粧も落して、世間普通の、十二、三の娘姿にもどっ