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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
今もある現物に基いて、その鋳工の歴史を調べて行こうというのだから、新しいことから初めて古い歴史に溯ったもので、あの時分としては可なりよく調べてあった。著者は無論あれから大いに進んだであろうが、それはそれとして有益な内容をもっていた。
第五冊目は金田一君より少し古い文学士の斎藤励君の『王朝時代の陰陽道』であった。著者は明治の英語学者斎藤祥三郎の長男で、その弟が、後に駐米大使として客死した斎藤博である。類のない篤学者で、貴重な研究をしていたのに、勉強がすぎて惜しいことに早死してしまった。
第六冊目は『植物妖異考』の下巻であった。それから、巻末の予告が大したもので、偉い連中が名を連ねていた。地方からの注文や月定めの購読者も出てきたが、その中に、私がそれからの長い年月、いっしょに仕事をした諸君が大分入っていた。つまり「甲寅叢書」というものよりも、一つのグループが作られるようになっていたのである。
購読者の中には、まだ学生時代の芥川竜之介もいた。後に世間で芥川の名を見るようになった時、「どこかで会ったことのある名前だが」と思ったりしたが、実は「甲寅叢書」の熱心な読者の一人であった。