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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

※(「虫+礼のつくり」、第3水準1-91-50)は何だかわからないけれども、虫扁の字を書くので蛇の一種だと思っているらしいが、ミズシンと関係あるものであろう。

北の青森県にはメドチという言葉が残っている。外南部あたりではいわないらしいが、津軽のことを書いた古いものの中に平尾魯仙という人の本がある。明治のごく近くになって出来た本だが、この中にメドチのことが詳しく書いてある。河童とは違うなどということもあり、メドチという一種の動物がいるように思っているらしい。ところがこのメドチ、ミズシン、ミツドンは、他地方の河童と同じような性格や話をもっているのである。日本の北と南と真中と、三カ所離れたところに同じようにM音ではじまる似たような名前があって、お互の間に往き来がない。それでこの三つが別々のところにあるというだけでも、かつて河童のことを水神といった時代があるだろうということが証明できるように思っているのである。

メドチ、ミズチ等の「ち」は、「霊あるもの」の意で、※(「虫+礼のつくり」、第3水準1-91-50)は「水の霊」のことをいうのであろう。しかしまだ形がはっきりしていないのに、虫扁に書いてしまったので、この漢字に影響せられて、これは蛇に違いないということになった。