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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

狐の思い出から

こうして田の神への信仰から発生した稲荷信仰が、後になって京都の東寺と結んで勢力を大きくしたこともあり、信仰を悪用した人々により、いわゆる狐つきという迷信をも生むに至ったのである。

狐の思い出から

私は幼いころ、狐を少しも不思議なものとは思わなかったようである。氏神のある傾斜地の横手には、七つか八つほどの穴があったように思うが、一度も姿を見たことはなかった。はじめて狐を見たのは、十三歳で上京して後のことである。上野の動物園で一度、そして二度目は茨城県布川の長兄の家であった。二度目の印象はひどく強烈なもので、それというのも、前後して隣家で惨劇が起ったからであった。

あの地方は利根の川床が高くなっていて、そこが台畑と呼ばれる耕作地となり、その堆積地の裾に人家があった。私の家の裏手はその台畑の傾斜面で、そこには花好きの兄がいつもさまざまな花を咲かせており、和やかな眺めであった。

私が布川に移った翌々年のことである。毎夜台畑の所で狐が鳴くので、家族は顔を見合せて不思議なことだと語り合っていたのであるが、じつは隣家つまり私の家の小川といった大家の下男が狐の穴を埋めたため、狐が困って「クオオ、クオオ」