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にっき

日記

宮本 百合子

07 一九二一年(大正十年)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 61,953 字 · 124 页

青空文庫

十一月八日

自分が忽然として彼の消失を感じ、一層強く我うちに生き返る感を持たないのは、彼と自分との人格的共通点のないことを意味する。

○夜、岡山のつぼたと云う人来り、話し弾み、一時頃帰られる。面白い人が、思いがけない処に居る。Aの友人に、一種気魄の多い人がうれしく感ぜられる。

読後感終了。新聞はアインシュタインが来朝する予定であることを報じ、そろそろ、原敬の死に関連する文化批評のようなものがのり始める。

如何にも秋の末、冬近らしい夕景になって来た。風に吹きちらされもつれあってきこえるとうふやの喇叭の音。

一昨日、新潮に出版のことを云ってやった。

庭に出て見ると、沈丁の黒ずんだ葉のしんに、来年の春、新らしい葉となるべき芽が、まっさおに、しおらしく二三分芽ぐんで居る。これから霜にあい、雪にあいして発育するのだと思うと、云い難い心持がした。発育に対し(精神的)人間が此ほど底からの忍耐深い力を与えられて居るだろうか。多くはそうでないと思う。

十一月八日(火曜)

風ひどし。お話にならず。

午前、『婦人公論』のを書こうとしたがおもうように行かず、「風の音」と云う小さいものをまとめる。