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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
01 第一部
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 159,223 字 · 320 页
「次郎ちゃんはいい子ね。手伝って下さるでしょう?」
春子にそう言われると、次郎は、もうぐずぐずしては居れなくなった。彼はいそいそと、玩具やら、春子が重ねてくれた絵本やらを、棚に運んだ。部屋ば間もなくきれいに片づいた。
「ありがと、次郎ちゃん。では、いいものをあげましょうね、お坐り。」
春子は、半巾で口のまわりの汗を拭き拭き、部屋の真ん中にぺったり坐った。
「なあに、姉ちゃん。」と、それまで仏頂面をして突っ立っていた竜一が、春子にしなだれかかって、その白い頸に手をかけた。
「まあ、暑いわよ。いやね。竜ちゃんは。お手伝いもしないで。」
春子は、口では意地悪く叱りながら、すぐ袂に手を突っこんで、小さな紙の袋を出した。袋には、飴玉が十ばかりはいっていた。三人は、一つずつそれを口にほうりこんで、しばらく默りこんだ。
窓先の青桐に日がかげって、家の中がいやに静かである。次郎は、まもなく帰らなければならない、と思うと、急に物淋しい気分になった。
「次郎ちゃんは、今日、由ちゃんとどうかしたんじゃない?」
ふいに春子が真面目な顔をして、二人の顔を見くらべた。
「ううん、何でもないさ。