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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

かく詩には祈祷があって生活描写がなく、小説には生活描写があって祈祷がない。そこでこの関係から詩の世界は「観念界」「空想界」に属すとされ、小説の世界は「現象界」「経験界」に属すとされる。即ち前者はプラトンの世界であって、後者はアリストテレスの世界である。また前者の態度は哲学的で、後者の態度は科学的であるとも考えられる。故に小説の表現は、常に科学的・分析的で、部分についてのデテールを細かく描くのに、詩の表現は哲学的・綜合的で、全体についての意味を直感する。そしてこの特色から、詩の表現は必然にまた象徴に這入ってくる。だがこの象徴の説明は後に譲ろう。

最後に言うべきことは、詩が貴族的であり、小説が俗衆的であるという、一般の人々の通解である。この一般的の見解には、もちろん相当の真理がある。なぜなら詩は、小説のように多数の公衆的読者を持たないから、すくなくともこの意味で、詩は小説に比して高蹈的だ。けれども「貴族的」「俗衆的」という言語が、この場合に何を意味しているかを、吾人は常識学に於て知らねばならない。例をあげてみよう。ソクラテスとプラトンとの比較に於て、前者は平民的だと言われ、後者は貴族的だと言われる。