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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页

青空文庫

これだけの人と器械とを備えて、いかなる事があっても決して失敗のないだけの準備をして、さて後は当日の天候に万事を委ねて待つのみである。当日は北海道全土はおおむね晴天に恵まれ、ただ上斜里のみが皆既の瞬間太陽が雲に蔽われてしまったのである。両手を腰にあてて薄明の中に天を仰いで立っていたストラットン教授の姿は今も明かに眼底に残っている。第三接触を過ぎてしばらくして、太陽はまた雲間を出て三日月形の姿を現わしたのであった。ストラットン教授は「吾々は不運であった」と一言いった。ただ皆既前後を目的としたロイヅ博士の仕事のみは奇蹟的に成功したのであった。この時ストラットン教授が「他の場所で成功さえすれば十分慰められる」といったと伝えられているのも事実である。それは小樽から声援の意味で当日上斜里へきていたライジングサン会社の支配人の慰藉の言葉に対する返事であった。

二か月に近い上斜里の滞在中、村民から慕われ新聞記者からも尊敬されていたストラットン教授の一面には、上斜里神社で拍手を打ち、校門の出入ごとに御真影奉安所に向って最敬礼をするだけの心構えもあった。しかし万事は終ったのである。