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あかくら
中谷宇吉郎集 第一巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页
その実験室は震災で取り壊しになった旧の物理の本館の地下室にあった。この本館というのは石と煉瓦で出来た四角の建物で、今の東京の大学のコンクリートの建物などと比較したら随分旧式な建物ではあったが、ひどく荘重でしかも純粋に欧羅巴風な感じのものであった。何でも独逸のどこかの理科大学の本館をそっくりそのままに建てたので、あんな立派なものが出来たのだという話を学生時代に聞かされたことがある。その地下室が研究用の実験室になっていて、広い廊下の一方が掘り下げられたセメントの中庭に面し、他の側に実験室の扉が並んでいた。全体が汚く埃っぽい割に閑静に落付いていて、薄明りの穴倉という感じであった。三四郎が初めてここへ野々宮さんを訪ねる所の叙景が実によくこの地下室の特異な風景を現わしているように私どもには思われる。比較的短い叙述の中に、いかにも当時の研究室の面影がよく出ているのは、その風景の中の大事な要素がよく把えられているためらしい。戸が明け放してあってそこから顔が出たり、部屋の真中に大きい長い樫の机があったり、やすりと小刀と襟飾が一つ落ちていたりする実験室内の何でもない景色の叙述にも妙に心が惹かれるのである。