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あかくら
中谷宇吉郎集 第一巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页
しかしそのようなこともだんだん少くなって、私の小学校時代の末頃になると、殿様も御前様もほとんど大部分を東京で過されるようになった。大殿様は、晩年には始終眼を患っておられた。特別の病気ではなくて、視力が次第に減退するのであったらしい。良い眼科医がその町にいるはずもなく、また遠方からわざわざ医者を聘ぶようなこともされなかった。そしてどことかの弘法様の水などを時々瞼に塗っておられた。それよりも自分には最も御気の毒な印象として残るのは、誰が申し上げたことかは知らないが、毎朝含嗽をされた水をコップに受けて、これで眼を洗うといいというので、毎朝それを実行されていたことである。口中の熱気の中に何か有効な成分があることが分ったとしても、誰でも躊躇することであろう。大殿様がこのようにして視力を愛惜しておられたにもかかわらず、経過は次第によくない方へ傾いて行った。
御殿は段々淋しくなってきた。丁度その頃からこの城下町で薄手と称する輸出向の絹布を織る工場が出来始めた。それが比較的好況だったものとみえて、今までの厚手という内地向のものを織っていた小さい工場の人々は、段々集って大きい工場を建てて、輸出物に手を染め出した。