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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页

青空文庫

士族と町人との区別がまだ幾分残っていた位であるから、その献上物の選定はかなりの大事件であったのであろう。ある時はわざわざ猟師に頼んで、生きた青首の鴨の番いを手に入れて、それを葬式の時の放鳥のように大きい竹籠に入れて持ってきたこともある。

大殿様は何とかの間伺候とかいう方で、能では当時有名な方だったそうである。半分は東京の御本邸で過されたのであるが、御帰りになるとよく能の会をされた。その町には旧い神社が二つばかりあって、ちゃんとした能舞台があった。何かの賑かな大祭が二度ばかりあったが、その時にはこの能舞台の周囲にすっかり桟敷を結って、旧藩士の老人達が朝から能を舞った。殿様も面をつけて出られた。謡の盛んな土地だけに、桟敷は勿論境内は一杯の人であった。暑い日に照らされながら、桟敷の毛布の上に行儀よく坐って、この能を一日見せられるのは恐ろしい苦痛だった。子供達はだんだん一処へ集って、時々挿まれる狂言を唯一の慰めとして我慢をしていた。御殿の大広間でも、年に数回は能の会があった。その時には、町の比較的大きい商店の主人達もぴかぴかする袴をはいて、沢山集ってきて賑かだった。