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あかくら
中谷宇吉郎集 第一巻
中谷 宇吉郎
中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第一巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:赤倉、英国日食班の印象、寒月の「首縊りの力学」その他、球皮事件、「光線の圧力」の話、御殿の生活、雑魚図譜、雑記、霜柱と白粉の話、十二花の雪、スポーツの科学、先生を囲る話、「先生を囲る話」について、続先生を囲る話、寅彦夏話、冬彦夜話、文化史上の寺田寅彦先生、雪の化石1、雪の話、リチャードソン。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 页
しかしそれだけのことならば、何も寺田先生を煩わすまでのこともないのである。それより膠質の物理的性質の研究に霜柱のような妙なものを特に選ばれたという点が問題なのであるが、今になって考えて見ると少し分るような気がする。その理由は色々あるのであろうが、第一に化粧品のような沢山の要素があってその各要素の総合的の効果が問題となるようなものの研究には、なるべく一つの目的をもって複雑な現象を解析して行く訓練を受けておく必要があって、その目的には霜柱のようなものの研究がいかにも恰好である。今一つには現在の物理学には物性の研究に大きい欠けた部門がある。今の物理を論ずる時には、一定の大きさを持った均一な物体について、その色々の物理的性質を調べるか、それでなければ、その物質の窮極の姿である分子や原子の構造を論ずるかであって、その中間の姿即ち粉体や膠質の性質は兎角物理的な研究の範囲外に取り残されている傾向がある。ところが化粧品の場合と限らず、日常の吾々の生活に密接な関係のあるものは、中間的性質に支配されるものが多いのである。即ち霜柱の研究には、氷塊の物理的性質や、氷の原子の構造ばかり調べていたのでは分らないことが沢山残るであろうということは直感的にも分ることである。