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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

の領野にしたのだと聞いております」

「た、たれがいった、そんな事を」

「たれでも、世間では、知っています。――父が、あなた方に遺孤を托したのも、それがあるからです。よも、間違いはあるまいと信じたのでしょう。私を、忘恩と仰っしゃるなら、その前に、あなた方こそ、死者の遺托を裏切った忘恩の徒ではありませんか」

「生意気なっ」

こんどは、間にあわなかった。呶鳴ったのは、良正である。良兼がとめるすきもなく、突っ立って、良兼のうしろを跨ぎ、

「忘恩といったな。叔父にむかって、悪罵したな。この青二才め」

将門の左の肩へ、彼の大きな足が、蹴ってきた。将門は、その足を、両手でつかまえた。そして、彼が腰を立てるのと、良正が、そこらの高坏や銚子を踏んづけて、仰向けに、ひっくり返ったのと、一しょであった。

「やったなっ、将門」

良正は、吠えた。しかし良正が、起き上がるまえに、廊の間にひかえている家人たちが、おどりかかって、うしろから、将門に、くみついていた。

虫籠の女人

頑丈な曲輪造りの家も、一瞬、家鳴りに似た物音と、獣じみた人間の呶号に、揺すぶられた。

――が。一瞬にそれは、ハタとやんだ。