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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
何か知れないが、留守中に、出頭するようにとの、通達が来ていたのである。庁の所在地までは、一夜泊りの往復だった。悪くすると、大掾国香や良正あたりから、先手廻しをして、訴訟でも出ているのではないかと思われ、将門は、恟々としながらも、相手の虚構をいい破ることばを、途々、無数に用意していた。
予想は外れた。だが、吉い事のほうに違っていた。
太政官下文の示達をもって、中央から彼にたいし、辞令が届いていたのである。
七位允、前ノ滝口ノ平小次郎将門ヲ以テ、相馬御厨ノ下司ニ叙ス。
と、ある。
将門は、意外なだけに、歓びが、大きかった。
御厨とは、地方地方の御料の荘園である。そこで取れる魚鳥の類や、果実、植物油、野菜などの大膳寮用の調菜を管理して、四季ごとに、朝廷へ送る職名なのだ。
都の朝臣たちにくらべれば、微々たる地方の一小官だが、地方にあっては、どんなに低くても、官職があるとないとでは、住民の信頼も重さもちがう。将門は、多年、酷使された左大臣家の恨みも忘れて、はるかに、小一条の忠平公へ、心を向け、心から恩を謝して、欣然と、豊田に帰った。
弟たちも、欣んだ。家人奴僕も、あげて祝いを述べた。