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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
つまりお許からして、敵の流言の策に乗っている。つい、この間までは、こうまででもなかったが、ひとたび、将門が、勝ち誇って、将門方が強いとみたので、急に、百姓共までが、そんな事をいい出したのだ。……かつはまた、右馬允貞盛ともある歴乎とした嫡男がありながら、父を討たれて、平然と、見過していたりして、お許は、どの顔さげて、以後、郷国の領民にまみえるつもりか」
老獪な叔父二人は、かわるがわる、虚実をまぜて、力説した。責めたり、すかしたりである。貞盛も、ついには、そうかと思い直して、あらためて、将門征伐の加担を約した。
しかし、賜暇の日限もせまったし、また、政治的に、中央において先手を打っておく工作も、大いに必要なので、ひとまず、彼はまた、京都へひっ返す事になった。
こうして、その年は暮れ、翌、承平六年の夏である。
良正、良兼の兵力にあわせて、さらに石田の貞盛の家人や、常陸源氏をも加えた数千の軍隊が、焼きつくような夏野をわけて、三たび、将門を襲った。――初めの、叔父甥喧嘩から思うと、じつに、思いもよらぬ本格的な戦争状態になったものというしかない。
野火は狂う。