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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
そして、しばらくまた、沙汰もなかった。
すると、三月の末。さいごの判決が、朝議の末、公卿列座の上、いい渡された。
「将門の罪は、厳罰に値するが、折ふし、天皇御元服の大赦あるによって、赦免、仰せつけられる。帰国して、謹慎を示すがいい」
無罪であった。将門は、夢みるごとく、かえって、ぽかんとしていた。
貞盛への申し渡しには、
「一族内紛の蔭には、何よりも、平良持の遣領が、争いの因になっていると断じる。よろしく、将門に渡すべき荘園の地券や、田領の証書など、一切を、このさい返却して、和解いたすように」
と、あった。
貞盛には意外だった。落胆顔は、いうまでもない。非常な不平である。しかし、返すことばもなく、命を奉じて、その日は退廷した。
将門は、国へ早馬を立て、
「訴訟は、勝った」と、妻や一族へ、便をもって、先に報じた。
それから初めて、彼は、自分の身になったような心地で四、五日、京洛を歩きまわった。妻の桔梗へ、都のみやげをと、都の臙脂だの、香油だの、めずらしい織物など買って、いそいそ、暮した。
きょうも彼は、八坂、祇園林など、遅桜の散りぬく下を、宿の方へ、戻りかけていた。