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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「どうしたのです、兄者人」

将頼もいい、将平、将文も、彼を囲んでいった。

「いや、どうもせん。ただ少しくたびれたよ、おれは」

「いつにないお顔色ですが」

「そうか……」と、将門は、自分の頬をなでた。知覚がにぶく、何だか、顔の幅が倍もあるような気がした。

「寝不足とみえる。案じることはない。きのうは、まずい戦をやってしまったが……なあに、こっちに、油断がなければ、あんなばかな負け方はせぬ」

「むしろ、私たちは、よかったと思います。――余りにも兄者人は、自分の気もちで、他を量りすぎる。これからは、私たちのことばも、きっと、きいて下さるでしょうから」

「……悪かった」

素直である。将門の、こんな素直も、弟たちにすれば、かえって、どうしたことかと、心ぼそい。

「いえ、決して、兄者人を、私たちが揃って、お責めするわけではありません。――ただ、いかに危険な相手共か、それを、もう一ぺん胆に知っておいていただかないと」

「わかった。もう、不覚はとらん。もういちど、おれの本当の力を、思い知らしておく必要がある。三郎、四郎」

「はい」

「近いうちに、見ておれよ。そうだ、充分に、郎党や馬を休ませておいてくれ」