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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

「これは、癒らぬ病ではない。わしも、かつて同じ病にかかったことがある。その薬を届けて進ぜる」

と、いって帰った。

将門は、その人のうしろ姿を伏し拝んで、

「ああ、申しわけがない。あの人には、何事も怺えとおせと、いつも、堪忍が大事だという御意見をよく伺っていたのに……。ついに、こんなみじめな自分の姿を見せて」

と、病床に、涙を流していた。

数日の後、景行の使いが、薬を届けてよこした。薬草袋を煮ては、毎日何度となく、その薬を飲みつづけた。驚くほど、尿がよく出る。それに比例して、気分が際立って爽快になってきた。

将門は、ひとり語に、

「おれは癒る!」

と、大声でいった。すると、空洞の木霊がグワンと(おれは、なおるっ)と、それに和すように、もう一ぺん聞えた。

肉体に、健康がよび返され、その健康が、彼の彼らしい意志気力を、恢復してくると、

「はて。おれはどうして、こんな目に遭っているのか。相馬小次郎将門ともある者がだ。おれは、決して、喧嘩に負けて凹むような男ではない。……そうだ、おれは合戦に敗れたのではなく、おれはおのれの病気に負けたのだ」

むらむらと、こんな考えかたが、頭を擡げてきた。