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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

――玄明のことばによれば、もし為憲が指揮をとれば、少なく見ても、三千の兵馬はいつでも自由に駆使する力があるという。

貞盛は、相変らず賢明だ。決して、表に自分は立たない。

そして、為憲を、抱きこみ、

「もし、あなたが、わが家の恥辱をそそいで給わるならば――そして大きくは、治国と平和のために、兇暴将門を、討ち取ってくれるならば、亡父国香の田領の一半は、お礼として、あなたに献上しよう。……また、国家への功労としては、私から太政官へ申請して、かならず相当な官位叙勲のあることを、お約束申してもよい」

と、ことば巧みに、説きつけていた。

さなきだに、弓馬にかけては、自信のある為憲である。心を動かさないはずはない。

「私の言は、決して、空言ではありません。――かくの如く、いつにてもあれ、将門討伐の官命はあることになっているのです」

と、貞盛はなおも、官符の写しや、訴状に関する書類を示し、また中央における堂上の空気なども、つまびらかに、為憲に語って、

「いま、大功を立てようとするならば、将門を討って、太政官の嘉賞を賜う事が第一でしょう」

と、この血気なる地方武者を、煽動した。