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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页

青空文庫

せっかく今日、客を招いて、晩春の陰鬱を、一掃したと思ったのに、遠方の大掾国香などという末端吏から、おもしろくもない厄介者を添え文して向けてよこし、舌打ちをもらしたことではあったが、平良持の子というので、そう素気なく追い払いもできなかった。良持は、生前から、何事につけ、藤氏の門に、臣礼を執り、彼の擁する東国の私田の事務でも勤めたがっていた男だからであった。

だが、その遺児にまで、どうこう考えてやるほどな好意はない。反対に、ふと頭をかすめたのが、日頃から彼の最も嫌忌している穢の心配だった。一日、はしゃぎぬいた疲労の反動も、それに手伝い、いきなり、臣賀爺への、大喚きとなったのである。

臣賀は臣賀で、また、雑色部屋へ来て、どなり立てていた。結果は、いちどそこまで、招き上げられた小次郎の身へ返って来た。小次郎は、横の土居門から、河原へ連れ出され、まる裸にされて、加茂川の水の中へと、突きのめされた。

「――穢を洗うのじゃ、穢を。朝のお陽さまが、東の峯から昇るまで、何度も、沈んでは、祓して、穢を浄めたまえと、諸天にお祈りしておるのだぞ。よいか。昼は、小屋籠りして、夜は夜で、七日の祓をやらねばならん」