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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
「小説公園」六興出版社、1950(昭和25)年新春号~1952(昭和27)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 页
小ざッぱりと結髪して、垢のつかない布垂衣など着ていると、よく、東国のえびすの子と、からかわれていた彼も、近ごろでは、どうやら、大臣邸の小舎人として、世間なみの召使には見えるようになっていた。
邸内での、彼の役がらは、車雑色とよぶ小者のひとりだった。主人の外出にあたって、牛ぐるまを曳き出し、そのお供について歩き、また、帰ってくると、牛を放ち、車の輪を洗い、轅の金具までピカピカ磨いて、怠りなく備えておく。
きょうも彼は、参内の供について、朱雀門の輦溜りに輦を入れ、主人の忠平が退がるのを、終日、待っていた。
ほかの納言、参議など、諸大臣の輦も、轅をならべて、供待ちしている。
ここでは、他家の雑色がよりあつまるので、都のなかの出来事は、一として噂から洩れることはない。
「なにがしの大臣の後家の許へ、ゆうべ、さる朝臣がいつものように忍んで行った。すると近ごろ多い群盗の一類が見つけて、おもしろ半分に、男女が、閨むつみの頃をはかって室を襲い、家人をみな縛りあげた上、財宝はもちろん、男女の衣裳まで悉皆、車につんで持ち去ってしまった。そのため、忍び男の朝臣は、着るに着る物もなく、さりとて、裸でわが家へ帰りもならず、雑色の布ひたたれを借りうけて、しかも夜が白んでから、こそこそ帰って行ったが、館には、有名なやきもち妬きの奥方が