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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
婚姻の変遷を調べてみると、荷物を後で送るのは、嫁が落着いたことが明白になってから、目立たぬように送るのが普通であったらしい。奈良から伊賀あたり、琵琶湖の西岸、高島郡付近でも、嫁の荷物はいつとはなく持って来るという話であった。五年おればこれだけ、十年おればこれだけ、婚家の姑さんが亡くなったからずっと持って来たとか、大きな婚姻でも必ずしも荷物を持って来ることを条件にしないという所が中央部にもある。それから考えると、私の見たような辻川の嫁入りは、明治の文化を区切る一つの目じるしになるのではないかと思う。
何村の某が何村の某の所へ娘を嫁がせるということを、やはり道路を利用して報告するようなもので、ちょうど今日の披露宴の源をなすような制度であろう。もともとは村の縁組というものは、風呂敷だけでいつの間にか知らぬ間に行くというのが普通のようで、あらかじめ景気づけて荷物を送るとか、けばけばしい行列で行くのは、村の人としては新しいことであったらしい。
問題は「嫁盗み」という、日本では非常に面白い慣習に、この嫁入支度が関係していることであった。それについて、私がいつも思い出すのは折口君のことである。