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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
静かに休めばいいと思う。君らが行っていろいろなことをいって突っつくのが困るんだから、みんなに話してやめてほしいと思う」そんなことを私がいったので、副島も閉口してしまったことがあった。
次兄通泰が歌をはじめたのは十五、六歳のころで姫路出身の国富重彦という歌人の所へ東京で入門している。そのころの兄の歌に、「灯のもとに女臥せり」という画題で、
思ひ出にみえなむ夢をさやかにと消さで起きつる閨の灯
というのがあるが、それを松波翁にみせたところ「起きつる」でなく「起きけむ」とせよと教えられたということをきいたことがある。私も次兄を通じて入門を乞うたが、入門させてくれず、松浦辰男翁をすすめてくださり、明治二十五年の一月に入門をした。その後法体となった遊山先生は、後年一年に一度ぐらいは姫路の方へも訪れている。
後年兄は山県公を中心とした常磐会という歌の会をしていたので、自然政治の方面にも関心を持つようになった。内幸町で眼医者を開業していたが、そこに来る連中は他の医者の患者とはちがって、政界の情報をさぐるために眼が悪いといって来る人が多かった。ある時など、山之内一次がやって来た。