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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
近頃でも私に向って、「松岡さんのお元気な時分には……」などと、懐しがって、あいさつしてくれる人がかなりある。
静雄の仕事の中で、私も一番賛成して一生懸命にやらせたく思ったのは、「日蘭通交調査会」の仕事であった。前から「日蘭協会」というのはあったが、それとは別に、この調査会を作って蘭領印度研究をしようとしたものである。弟はいつも出歩いていたので、私が貴族院生活の下半期に、この仕事のために大変働いてやった。
オランダから来る者で、少なくも外務省を通じて物を言える連中は嬉しがらなかったが、じかに蘭領印度から来る人はみな私の所を通るものだから、大分政治的になってきた。それに弟が退役して暇になったため、オランダへ行って事業をやろうとした。オランダではニューギニアをもてあましていたので、日本人に水田を作る場所を提供しようといい出して、大分話が進んできた時、外国から横槍が出て物にならなかった。この頃私はよく中野正剛の雑誌『東方時論』に頼まれて、蘭領印度のことを書いていた。飛行機の利用できなかったあの頃、行ったこともないのに、まるで見て来たように書いたのだから面白い。