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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

こうして全国をまわって台湾まで行ってきた。

「面白いですね、台湾の基隆沖を流れている潮の冷たさは、金華山沖と同じですね」とか、「植物帯が同じですよ」などと話してくれた。

郷里の秋田から、縁続きになる綺麗ないい細君を迎えて、大分県の別府で土産物店をやって、ある程度成功すると、江の島へ移ってやはり土産物店を出した。自分は始終地方を旅行して、珍しいものがあると店に送るし、途中でも標本を造って学校に買ってもらった。

私は金の援助など無論しなかったが、ただ静雄といっしょに力になってやっただけである。蘭領印度の知人を紹介してやったので、江川はジャヴァへ渡って行った。そしてとうとうハルマヘラ島に落着いて、開拓をはじめた。見聞がひろいから、その知識でいろいろなことをしたらしい。例えば菊のような草を煎じ薬にして、利尿剤にすることなども考えて、私の所にも送ってよこしたりした。

話も上手で人を感動させるので、私は『東方時論』に江川のことを書いたことがある。印象に残っていることをかいつまんで話すと、害虫の発生する時には速力が非常に早く、稲作をして、せっかく苗が大きくなったと思うと、一晩たたないくらいの間に、たちまち害虫が拡がってしまう。