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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

作品の『運命論者』の材料になるようなことがあったとか、なかったとか、詮索する向きもあるが、私には興味はない。ともかく二人の兄弟は大変よく似ていて、身体は収二の方が大きかったようである。

今でもよく憶えている、本郷の大学前にあった喜多床という床屋の前を私が歩いていると、後から田山花袋がやって来て、「おい」といって私の肩を叩いてから、「君に会いたがっている奴があるからいっしょに行かないか」という。「誰だい」ときくと、「国木田って男だ」「それは面白いねえ」といって、いっしょに会ったのが、たしか明治二十九年の秋だった。田山とは松浦辰男先生の歌塾の同門であったから、早くから知っていたが、それに比べれば、国木田との交遊はずいぶん後のことであった。

青山にいたころ、独歩の両親はひどく年をとっていて、ただ息子の世話にばかりなっていた。十月以後に生れた子供をその年の干支のマル児というが、そのうちでも巳年生れのマル児は特に仕合せがいいとか、哲夫の子の虎雄はそのマル児だからめでたいなどということをよくいっていた。竜野の話もきいてみたが、あまりはっきりしたことはいわなかった。