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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
今からかぞえると志賀君はまだ二十三、四のころのことであったろうと思われる。
私は英語の会話の稽古をするのに、少しでも面白い本がいいと思って、このピネロを次々に買っていた。ところがそれから十年近くもたって、たしか貴族院に行ってからであったろう。ある日のこと、今度の大戦中に京都と奈良を爆撃から救ってくれた、例の米国の日本美術学者、ラングトン・ウォーナーがやって来た。最初は人に連れられてだったが、後にはたびたび私の官舎に来るようになって、来れば私の部屋に入っていろんなものを見て帰るのである。ある時、私がピネロを本棚の端から端まで並べているのを見て、こんなことをいった。「柳田さん、あなたがこの本を並べている主旨は、私にはよく判るのですけど、だめですよ、これじゃ覚えられませんよ」といった。つまり英語の稽古にはこんな本は適しないと注意したつもりであったらしいが、まったくそのとおりであった。
そのころのウォーナーはただ面白いいたずらっ児のような人に見えていたが、それが何十年もたってから、日本文化の恩人になろうとは、誰が想像したであろうか。
ラングトン・ウォーナー博士についてはこんな思い出もある。