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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

この中には今では唯一の琉球文献となったものが少なくない。

伊波君は東京大学で、大阪の上野精一君といっしょだったように聞いている。上野君の方でも伊波君に好意をもっていたらしい。私も琉球のことで何か朝日にさせたいと思う時は、村山翁よりは上野君に相談していろいろして貰った。

伊波君とは『おもろさうし』の話をし、その校訂を引受けて帰ってきた。それから日が経って、大正十三年一月九日の日記にこの校訂のことが出ている。西洋から帰って一カ月足らずだったが、私は上田萬年さんに会って、「どうしてもこれを出版したいと思いますので、骨を折って下さいませんか」と頼むと、話のよく解る人なので、直ぐに運動をはじめてくれ、それを幣原坦さんに引継がれた。こうしてみなが好意をもってくれて、約一年かかって、たった三百部だったが、出版費は学士院から出して貰った。それもおそらく伊波君の東京に出て来る動機の一つになったことであろう。何しろ一部しかないものを基にしたので、今になってみると、原本が悪かったとか、台本がよくないとか、校訂が十分でなかったとか、いろいろ悪口をいう人もあるが、他に方法がなかったのである。