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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

そのうちあまり多いので、県の方で、合併整理して減らすという方針になり、その代りに慈恩寺の境内に由緒を書いた石碑をたてることになった。

いつも宅へ来ていた若い和尚さんの口添えで、村の人たちが共同して、私にその碑文を書いてくれと頼みに来、とうとう引受けることになった。私としては「心が安まるように、満足ができるように」といった心持と、文章というものは目的を達しさえすればそれでいいのだというような気持とが自然にあって、仮名混りのだれにでも読める文章を作った。なるべく新聞のような口調で、ハイカラな文章であったが、内容は堂々たる政治論であった。つまり昔の政治的、学問的な問題を扱い、将軍家の狩りに来た原野のことなどにも触れたように思う。あのあたりは、書道の盛んな土地なので、県の女子師範学校の先生で一人大変よく書く人があり、その人に字を書いてもらった。建碑のときに私も招ばれて行ったが、かなり長い文章だったので、なかなか大きく、立派な石碑だった。寺から半丁ばかり手前に立っていたが、いまは諏訪神社の境内に移されているそうである。

他の文章の中には、慰みに書いたり笑いながら書いたりしたものもあるが、親の喪に大祓いだけでは困ると思って作ったノリトと、甥雄吉が亡くなったとき、皆の意見を阻んでも、その悲しみを表現しようとした、この