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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
足利末期のがあり、天正とか慶長とか日付のはっきりしたものもある。それ以上古いというのはいまのところ分らないらしい。
オシラという言葉は東京の近くにもあり、蚕のことをさしている。オシラを蚕の神としている所は広く、蚕と関係があることは考えられるが、東北で養蚕が盛んになったのは江戸時代の中ごろからといってもよいので、この言葉と一本の棒の信仰が結びついたのではなかろうかと私は考えている。オシラサマの信仰のいちばん盛んな南部の八戸地方には養蚕があまりないのに、蚕の神をまつるのは不思議である。だから話の面白味だけで普及したもので、東北のオシラサマは蚕の祈祷とは関係ないのではないか。
東京付近のオシラサマは、人形も粗末だが、蚕のよく出来ることをねがう女たちが、みな集まってきて拝んでいる。それをオシラ講とよんでいる。
東北地方では、イタコという巫女がオシラサマを手にもってまわしながら語る「オシラサマ祭文」というのは、馬と人間が結婚した話であって、一方が馬オシラ、一方が姫オシラといって、この二本のオシラサマを持って物語する。まことに奇妙な物語で、もともと日本にあったものとは思えない。