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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

なども、木地屋についての問題を扱い、遠く南北朝の時代にも溯ろうとする面白い試みであるが、何分にもその基になるものが全部近江蛭谷に伝わる作りごとから出発しているので、信用いたしかねるのである。本の出来た年代にしても、私がこの事柄をいい出したときよりは、やっと十年ぐらいしかさかのぼれないのである。収録されている古文書の写しなども、太閤時代の長束正家という人に関するものなどは、本物らしいが、他はどうも疑わしいものが多い。

しかし木地屋そのものは、なかなか興味のある問題をもっている。播州西部の谷間でも話にきくし但馬、丹波から丹後、越前あたりにかけても、その拡がりが認められる。

全国の木地屋の総元締と伝えられてきた近江の木地屋も、愛知郡の蛭谷や君ヶ畑、犬上郡の大君ヶ畑など、それぞれの系統があったらしい。しかもここでは寛政、享和のころにはすでに木地の材料がなくなって、ただ諸国に散らばっている木地屋を糾合するだけであった。木地屋の系統といえば、私は面白いことから近江と地方とのつながりを知ったことがある。

明治四十年前後私が内閣の役人をしていたころ、賞勲局に横田香苗という人がいた。