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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
物忌みあけの十一月というのは霜月というくらいで、もう霜が降りるから、その時に秋祭をするのは少し無理がある。物忌みという昔の信仰、つまり習慣を大事にすればこそ一カ月辛抱ができるが、信仰が薄れてくれば一カ月の物忌みは難しくなってくる。
亥の子の騒ぎはこのように物忌みのうすれかけた時、誰かが工夫して、十月の亥の日に賑やかな行事をして、神無月そのものを花やかにして見ようとしたのではなかろうかとも考えられる。あたかも今日スポーツを村に入れて、活気を呼ぼうとするのと同じ気持ではなかったかと思う。
そこへさらに明治五年太陽暦が採用される時、朝儀の新嘗祭が新暦十一月二十三日に行われることに決められたので、よけいに複雑になってきたのであった。
新嘗祭はもと旧暦の十一月、すなわち霜月の二十三日に行われていた。しかし、もともと二十三日に行われていたのではなく、宮中の新嘗祭などはいつも霜月第二の卯の日ということになっていた。その祭の済んだ後が、いわゆる「豊の明り」である。あまりに厳重な物忌みをしたため、そのとけた時に全部が解放されるわけである。この感覚は野蛮人になればなるほど対照が甚しく、それまでは男女の往き来もないというくらいきびしいのが、祭がすむとまるで気違いのようになってしまって、飲みたい者は飲み、喧嘩もおこるというふう