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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
それはおいおいに説明してゆきたいと思っている。
今日では、大陸から朝鮮を南下し、海峡をぴょんと渡って日本へ入って来たろう、文化も人間もみなそうして入って来たろうと、簡単にきめる空気が非常に強いが、私ははっきりとその説に反対している。何故なら、南からでなければ稲は入って来ないし、稲が来なければ今の民族は成立しないと思うからである。今の民族は単に百姓が米を作るだけでなく、皇室も米がなければ神様をおまつりすることができないのである。神様を祭る時の食物には必ず稲が入っている。したがって私は、日本民族は稲というものと不可分な民族だと確信している。稲は後から来たようなことをいう人もいるが、どうしても稲ははじめから携えて来なければ、それに伴う信仰とか、慣習とかのある説明がつかない。考古学者も人類学者も、このようなことを少しも考えない。そのいちばん極端なのが、例の騎馬民族説である。
日本民族が馬に乗って北シナから南へ移住して、どっと船で馬もろとも海を渡ってきたというのである。その理由として、古墳前期には騎馬に関する遺物が少なく、後期に入ると急にふえ、りっぱな馬のものが現われるということをあげる。