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こきょうしちじゅうねん
故郷七十年
柳田 国男
「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页
つまり赤い米が常のものであったのが、人々の選択によって今日のように白くなってきたのではないかと思う。沖縄から来た人などは米は薄赤いと思っていたという話がある。ずっと昔には赤米だったのが、改良されてだんだん白くなったために、後になるとかえって赤米に重要度がおかれるようになり、何か大事な時だけ赤米をたべようということになったのではないか。小豆御飯のお米の色と、赤米だけで炊いたのと、色が大変よく似ているのである。物忌みの忌日の特徴をつけ、食べる人に今日から常の日とは違うということを意識させるため、もとは赤米を炊いたのが、在来の赤米がだんだん少なくなって来たので、それによく似た小豆御飯を炊くことになったのではないかと私は考えている。そうして小豆を盛んに栽培する区域と米作地帯が同じであり、小豆御飯の米の色と赤米を炊いた御飯の色とが大変近いということが、問題に対する一つの暗示ではないかと思っている。
人間が父母から子供に移る遺伝は、家畜などでも経験できるが、稲が非常に規則正しく、毎年一回ずつ循環して、籾粒を蒔いておけば茎が出、花が咲き、また穀物になるという現象は、はじめてその栽培をやり出した民族にとって、かなり大きなミステリィ(神秘)だったにちがいない。