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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

そして舟を作るには、樹木の豊かな所が直ぐに造船所になったわけであろう。しかし、いずれの舟も、ほんのわずかの航海しかできない脆弱なものであったに相違ない。

だから古代に人馬の大部隊が朝鮮から日本へ渡来したなどということは、事実とは合わない議論である。熱心とか、真理を愛好する心持とか、これを人間の幸福に役立てようとかする態度に対しては、私といえども一言もないが、事実は事実として究明しなければならないのである。ただ外国の書物を拝借して、「過去においては」とか、「前代日本では」とか、概念論で簡単に片づけてしまおうとする人たちがあるが、そんなことなら、われわれはこんなに苦しみはしないのである。前代というならば、せめて『六国史』が京都の周囲に払ったのに劣らない注意力を、全国に払ってからにしてもらいたい。同じ江戸期の三百年だって、初めと後とでは地方人の気持一つでも違っているし、その地方地方がまたそれぞれの特徴をもっていたのである。

さて小さな丸木舟で、どうしてきたか。浦づたいに棹で来ることもあったろうし、潮流を利用して島に近づくとか、風を利用したということも考えられる。