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こきょうしちじゅうねん

故郷七十年

柳田 国男

「神戸新聞」神戸新聞社、1958(昭和33)年1月9日~9月14日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 257,350 字 · 507 页

青空文庫

つまりシュプラッハ・インゼル(言語島)になるわけだから、そこだけが変って大勢には影響しなかった。それに国替えをすると、何処の言葉だか判らないものになってしまう。田山花袋なんかの言葉の中にも、とうとう死ぬまで作品の中に現われていた方言があった。あれは上州館林の人だったが、藩主の秋元という家は度々国替えになって、もと山形にいたのが館林に移ったので、田山の母君も山形で育った人であった。そのため田山君も館林の周囲ではいわない言葉を時々使っていた。例えば「居眠り」という言葉が東京にあるが、東北では「ネムッカケ」という。関東ではいわないのに、田山君には自分の家で使うのでそれが分らず、「ネムッカケ」という言葉を作品の中に書いている。そんなことは注意すれば他にもあって、知らずに使っていて、いい言葉もあり、決して悪い言葉ばかりではない。

私らはあまり使わないが、方言に対して標準語という言葉がある。共通語と今ではいう様だが、これはもっとふやさなければならない。

またアクセントの問題もあるが、私はとうとう故郷を離れて七十年間、上方の方のアクセントですごしてしまった。近ごろやっと判ったのに「月落ち烏啼いて」