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ふたばていよだん
新編 思い出す人々
内田 魯庵
内田魯庵『新編 思い出す人々』。同一底本的分册已合并为一书。收入:二葉亭余談、淡島椿岳、鴎外博士の追憶、硯友社の勃興と道程、最後の大杉、斎藤緑雨、三十年前の島田沼南、美妙斎美妙、二葉亭四迷、二葉亭四迷の一生、二葉亭追録、明治の文学の開拓者、四十年前、露伴の出世咄。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 215,401 字 · 427 页
一応初対面の挨拶を済まして部屋の四周を見廻した。薄暗いランプの蔭に隠れて判然解らなかったが、ランプを置いた小汚ない本箱の外には装飾らしい装飾は一つもなく、粗末な卓子に附属する椅子さえなくして、本箱らしい黒塗の剥げた頃合の高さの箱が腰掛ともなりランプ台ともなるらしかった。美妙斎や紅葉の書斎のゴタクサ書籍を積重ねた中に変梃な画や翫弄物を列べたと反して、余りに簡単過ぎていた。
風采は私の想像と余りに違わなかった。沈毅な容貌に釣合う錆のある声で、極めて重々しく一語々々を腹の底から搾り出すように話した。口の先きで喋べる我々はその底力のある音声を聞くと、自分の饒舌が如何にも薄ッぺらで目方がないのを恥かしく思った。
何を咄したか忘れてしまったが、今でも頭脳に固く印しているのは、その時卓子の上に読半しの書籍が開いたまま置かれてあったのを何であると訊くと、二葉亭は極めて面羞げな顔をして、「誠にお恥かしい事で、今時分漸と『種原論』を読んでるような始末で、あなた方英書をお読みになる方はこういう名著を早くから御覧になる事が出来るが、露西亜には文学書の外何にもないので三歳子も知ってる名著に今時分漸とこさと噛り付いているような次第で、」