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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

そして芸術家としての所謂詩人も、この気質的なる本質では、常に彼等の人間夢想家と一致している。例をあげてみよう。概ねの所謂詩人はその通りで、悉く皆一種の求道者であり、旅行家であり、哲学者であり、革命家であり、実在的ニヒリストであり、そして要するに情熱的なる人間生活者である。

世界の代表的なる詩人について、この事実を調べてみよう。先ず日本で言えば、芭蕉や、人麿や、西行やが、そうであった。彼等は人生の求道者であり、生涯を通じてのロマンチックな旅行家だった。(日本の昔の詩人には、不思議に旅行家が多かった。彼等は自然について、心のイデヤする故郷を見ようとしたのだ。)外国に於て見れば、バイロンは正義に殉じた熱血児で、ハイネはプラトニックに恋愛を歌いつつ、革命に熱した人生の戦士であった。ゲーテ、シルレルは文字通りの哲学者で、かつ一種の宗教家でさえあった。ヴェルレーヌ、李白に至っては典型的なる純情のニヒリストで、陶酔の刹那に生を賭け、思慕の高翔感に殉死しようとするところの、真の「詩情の中の詩情」を有する詩人であった。キーツ、シェレー、マラルメの徒は、何れも象徴的なる実在主義者で、一種のアナアキズムの宗教家である。