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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
それは一つの、民衆を「悦ばすため」の、娯楽としての芸術である。だが彼等の目的から、何をしているだろうか。それはあらゆる最高の手段に於て、民衆の倫理感をあおり立てる。恋が破れ、貞操が失われ、血が流れ、義人が殺され、善人が迫害される。でなかったらばあらゆるロマンチックの冒険と怪奇によって、宗教感のセンチメントを高調させる。しかもこの感激的高調にかかわらず、すべての出来るだけの無内容と、できるだけの愚劣な馬鹿馬鹿しさとで、民衆の甘ったるい理解力に訴えるべく、用意を十分に備えている。
たれでも我々は、こういう芸術を軽蔑する。ところが民衆には、これがいちばん悦ばれるのだ。なぜなら民衆は、永遠に稚気芬々たる子供であって、真の高いもの、美しいものを理解できないから。しかも彼等は、常に渇くように詩を求めている。どこにでも、ただ詩が――詩的な感激が――有りさえすれば好いのである。たとえば彼等は、丁度腹の空いた子供に似ている。何でも好い。詩でありさえすれば食おうとする。しかもまだ不幸なことに、彼等の味覚は低劣であり、胃袋は駄菓子によって傷害されている。民衆は一のいじらしく、純良なる、しかしながら憐れむべき貧民の子供である。