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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
のみならず小説は、他のより本質的な特色から、叙事詩と共通した精神に立ってさえいる。それで或る人々は、時に小説を指して歴史(文学的歴史)と言い、或は散文の叙事詩と呼んでいる。だがこうした呼び方は、もちろん言語上の比喩であって、具体的に適応しないのは勿論である。明白に言って小説は――どんな歴史物語的の小説でも――実の歴史とちがっているし、また勿論叙事詩とも根本でちがっている。なぜなら小説の表現は、史上の事件を「描写する」のに、歴史はこれを「記述する」し、叙事詩は「情象する」からである。
叙事詩と小説の相違は、琵琶歌と講談の相違である。琵琶歌は感情の浪に乗って事件が語られ、講談はそれがさも有る如く、事件がレアールに描写される。
叙事詩に類する別の韻文は、劇詩と称するものであって、これの舞台に於ける様式を詩劇と言う。この劇詩や詩劇やが、普通の科白劇とちがうところは、後者が「知性の意味」を主とし、人生のレアールな真相を表現しようと欲するのに、前者は「感情の意味」を主として、神秘、荘厳、優艶、典雅等の、情的な意味や気分を出そうとする。即ち後者の表現は「描写」