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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

であって、前者の表現は「情象」である。西洋のバレー、パントマイム、オペラ、日本の能楽、歌舞伎劇等は、その脚本の韻文――即ち劇詩――と共に、前者に属すべきものであろう。

しかしながら西洋の古典詩中、いろいろな意味で叙事詩の対象となるべきものは、実に女詩人サッホオ等に代表される抒情詩である。この「叙事詩」と「抒情詩」とは実に西洋詩の二大範疇と言うべきもので、古典韻文の既に全く凋落した近代に至っても、尚或る変貌した形に於て、本質上から互に対立している有様である。おそらくこの二つの詩派の対立は、永遠に世界の終るまで、避けがたく両立する二大系統であるだろう。しかしこの解説は後に譲り、尚表面上の説明を続けて行こう。

古典韻文としての抒情詩は、形式に於ても内容に於ても、大体ほぼ叙事詩に類している。しかしながらただ、或る一の相違で名称を異にしている。その根本的なる相違は、叙事詩が*男性的であるに対し、抒情詩が女性的であるということである。即ち詳説すれば、叙事詩の詩題は主に英雄談、冒険談、戦争談であって、その情操は雄大、荘重、典雅、豪壮等の貴族的尊大性を高調している。