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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
所謂唯心論と唯物論、観念論と経験論、目的論と機械論等の如き、人間思考の二大対立がよるところは、結局して皆此処に基準している。
ところでこの対立を表現について考えれば、音楽は即ち時間に属し、美術は即ち空間に属している。実に音楽と美術とは、一切芸術の母音であって、あらゆる表現の範疇する両極である。即ち主観主義に属する一切の芸術文学は、音楽の表現に於て典型され、客観主義に属するすべてのものは、美術の表現に於て典型される。故に音楽と美術との比較鑑賞は、それ自ら文芸一般に通じての認識である。
音楽と美術! 何という著るしい対照だろう、およそ一切の表現中で、これほど対照の著るしく、芸術の南極と北極とを、典型的に規範するものはない。先ず音楽を聴き給え。あのベートーベンの交響楽や、ショパンの郷愁楽や、シューベルトの可憐な歌謡や、サン・サーンスの雄大な軍隊行進曲やが、いかに情熱の強い魅力で、諸君の感情を煽ぎたてるか。音楽は人の心に酒精を投じ烈風の中に点火するようなものである。仏蘭西革命当時の狂児でなくとも、あのマルセーユの歌を聴いて狂熱し、街路に突進しないものがどこにあろうか。