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しのげんり
詩の原理
萩原 朔太郎
「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页
おそらく彼等は、世界に於ける愚劣なものを、自己の詩人的な性格について自覚している。そして反動から、より頑強な心を持った、神経の太々しい、大胆無法な勇気をもった、真の英雄的なものに憧憬している。
故に詩に於ける権力感は、常に非所有のもの、自由の得られないものに対する、弱者の人間的な羽ばたきである。換言すれば、詩人は詩を作ることによって、表現からの権力を得、貴族を現実しようとする。実にホーマーについて知られることは、彼がイリアッドを書いている時に、あの見すぼらしい放浪詩人が、実にトロイ戦争の勇士であり、アキレスであったと言う事である。だが反対にもし、ホーマーが実の英雄であったならば、おそらく彼は、そうした詩など書こうともしなかったろう。寧ろ彼は始めから、トロイ戦争の勇者になり、アキレスのように戦場で功名していた。そしてダンテも、ミルトンも、或は高蹈派のルコント・ド・リールも、すべての詩人がそうであった。彼等のあらゆる尊大なる、芸術的荘重感にもかかわらず、実には心の弱い詩人であり、神経質な感じ易い人物にすぎなかった。
されば詩に於けるクラシズムは、あまりに情熱的な詩人の血が、北極の氷結した吹雪の中で、意志の圧迫されることに痛快する、一種の逆説的詩学に外ならない。