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しのげんり

詩の原理

萩原 朔太郎

「詩の原理」第一書房 、1928(昭和3)年12月15日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 153,641 字 · 305 页

青空文庫

それは智慧の瞳を鋭どくし、客観の観照に澄み渡って行く。故に絵画の鑑賞には、常に静かな秋空があり、澄みきった直感があり、物に動ぜぬ静観心と叡智の行き渡った眼光がある。それは見る人の心に、或る冷徹した、つめたい水の美を感じさせる。即ちこの関係で、音楽は正に「火の美」であり、美術は正に「水の美」である。一方は燃えることによって美しく、一方は澄むことによって美しい。そして絵画のみでなく、またもちろん、すべての造形美術がそうである。たとえば、建築の美しさは、あの幾何学的な、数理式的な、均斉や調和の取れた、そして大地の上に静寂としてる、あのつめたく澄んだ触覚にある。それは理智的の静観美で、熱風的の感情美でない。即ちニイチェの比喩で言えば、美術はまさに智慧の女神アポロによって表徴されてる、端麗静観の芸術である。

音楽と美術によって代表されてる、この著るしい両極的の対照は、他の一切の芸術に普遍して、主観的のものと客観的のものとを対照づけてる。即ち主観的なる一切の芸術は、それ自ら音楽の特色に類属し、客観的なるすべてのものは、本質上に於て美術の同範に属している。そこでこれを文学について考えれば、詩は音楽と同じように情熱的で、熱風的な主観を高調するに反し、小説は概して客観的で、美術と同じように知的であり、人生の実相を冷静に描写